2012年4月11日水曜日

CIMAマルチプロジェクターキセノンヘッドランプの移植(1/2): SOARISTO工房


[はじめに]

 それは、ある1通のメールから始まりました。
   「SOAさん、こんなDIYを見付けました。つぎはこれがいいですよ!(爆)」
 そこには、新型CIMAのヘッドランプを、フォグランプとして取り付けたDIYが紹介されていました。
   「す、すごい!」
 目も眩むばかりの圧倒的な光量といい、前方に向かって一直線に進む配光パターンといい、まさに理想的なフォグランプとなっていました。

 しかし、SOARISTO号のフォグランプのHID化はすでに完了していますし、第一、これだけの大きさのフォグランプを取り付けるスペースなどありません。
   「う~む、困った」
 しかし、「(爆)」と言われてしまったからには、是が非でも完成させるしかありません。こうなったら職人の意地です。(笑)

 フォグランプとして、どこに取り付けようかと頭を悩ませていたところ、はたとあることに気付きました。
   「ロービームに入るじゃないか!」
 そうなのです。ARISTOのヘッドランプのロービーム側が、新型CIMAのヘッドランプを埋め込むのに、ちょうどいい大きさをしています。

 しかしそのためには、純正のディスチャージヘッドランプユニットを分解し、新型CIMAのヘッドランプユニットを取り付けられるよう、かなりの改造が必要となってきます。

 さらには、ARISTOに移植するにあたっての最大の難問として、車の加重状態に応じてヘッドランプの光軸を調節する「オートレベリング機能」を、どのように活かすか、があります。

 すでに、VIPカーといわれるカテゴリーの車には、新型CIMAのヘッドライトを無理矢理移植したものが出ています。ただ、光軸がバラバラであったり、配光が不自然になってしまっているものも、中にはあるようです。せっかくの移� �ですが、ルックスを優先したが故に実用性をスポイルしまっては、意味がありません。

 そこで、「ルックスと実用性を両立させた移植」を第一目標とすることにしました。新型CIMAのヘッドランプの特徴的なデザインや圧倒的な光量を活かしつつ、オートレベリング機能をきちんと動作させ、日常のドライビングにも何の支障も来さないこと、また限りなく純正に近いクオリティーで作り込みを行うこと、この2つを主眼(!)とします。

 ここに、「フォースは我に、新型CIMA複眼移植プロジェクト」が発足したのでした。
(ちょっと大げさか?)0xF9C7

[マルチプロジェクターヘッドランプについて]

 新型CIMAのアイキャッチポイントとなっているマルチプロジェクターヘッドランプですが、日産さんによると、「従来のプロジェクターの1.7倍、世界最高レベルの明るさを実現した」とのことです。

[写真1]


  • 東京モーターショーに展示されていた、新型CIMA(F50)のマルチプロジェクターヘッドランプユニットです。(写真1)
  • 説明には、「7眼化により、大口径双放物面リフレクターによる高い光束利用率と、レンズ軽量化を両立させたヘッドランプ」とありました。
  • 自動車工学の紹介記事によると、「マルチレンズと特殊な自由局面リフレクタの組合せおよび7つの凸レンズで、大光量をより広く最適に配光し、従来のフォグランプの照射範囲もカバーする」そうです。

 

[写真2]


DRについて言う人は何ですか。

  • さっそく日産部品さんまで行ってきましたが、新品で購入すると、片側だけでなんと98,000円(!)もします。(写真2)
  • バーナーもバラストも込みなので仕方ありませんが、アッセンブリー丸ごとの販売で、パーツ単品での販売はしていないそうです。
  • 解体屋さんもいくつか当たってみましたが、そもそもこんな特殊なパーツ(?)が出回るはずもありません。
  • 今回は、HID systemさんより、左右2個セット48,000円で購入しました。

[マルチプロジェクターヘッドランプの分解]

 まずは、今回の素材であるマルチプロジェクターヘッドランプを分解してみました。大きいとは予想はしていましたが、これだけデカいとは思いませんでした。

[写真3]


  • これが今回購入した20mm機関砲、でなく、マルチプロジェクターヘッドランプの本体です。0xF9C7(写真3)

 

 

[写真5]


  • とにかく、デカい!です。(写真5)
  • レンズ面の幅は約14cm、奥行きは約15cmもあります。
  • ARISTOのヘッドランプユニットと合わせてみましたが、このままでは取り付けできないことが分かりました。
  • きちんとビルトインするためには、かなり工夫する必要がありそうです。

 

[写真6]


  • 遮熱板と思われるアルミ板と取付けステーです。(写真6)
  • 取付けステーは、右用と左用とがあります。

 

[写真7]


  • リフレクターです。(写真7)
  • プラスチック製でメッキ加工してあります。
  • 形状は、たしかに放物線のような弧を描いています。
  • このリフレクターでHIDバーナーからの光を収束し、レンズ面に送るのですね。

 

[写真8]


  • マルチプロジェクターのレンズ本体です。(写真8)
  • 本当に、ガトリングガンか昆虫の複眼のように見えますね。
  • 覗き込むと、自分の顔が7つ見えます。(笑)

 

[写真9]


  • レンズをハウジングから取り外したところです。(写真9)
  • 7つのレンズはガラス製で一体成形でした。
  • 裏から金属板でレンズ面を残して遮光されています。

 

[写真10]



  • ハウジングです。(写真10)
  • 金属製でダイキャストで出来ています。
  • ちょうどレンズに当たる部分が窪んでいます。
    (まるで「たこ焼きプレート」のようです)(笑)
  • この窪みが、レンズ下半分に入射する光を遮ることで、光が上方へ拡散することを防いでいるのですね。

[純正ヘッドランプの分解]

 つぎに、ARISTO純正のディスチャージヘッドランプユニットを分解し、マルチプロジェクターヘッドランプを取り付けられるよう加工しました。あわせて、今回の移植のキモである、「オートレベリング機能」の動きについても調べてみました。

[写真11]


  • ARISTO純正のディスチャージヘッドランプユニットです。(写真11)
  • 現車に付いているものを取り外してしまうと、作製中は車に乗れなくなってしまうため、今回は新品のユニットを用意しました。
  • 写真は、後期型のブラックメッキ仕様です。

 

[写真12]


  • クリヤカバーとヘッドランプユニット本体とを分離します。(写真12)
  • 分離するためには、両者の隙間を埋めている防水コーキングを温めて柔らかくします。
  • これには、業務用のヒートガンで熱する方法と、熱湯に浸けて温める方法とがあります。
  • ちなみに、失敗した場合には、ヘッドランプユニットのカバーだけを購入することができます。
     
    品名 品番 価格 始期-終期
    ヘッドランプユニット RH 81130-30871 22,200円 9808~0008
    ヘッドランプユニット LH 81170-3A421

 

[写真13]


  • レンズ本体のハウジングが干渉してしまうため、ヘッドランプユニットの一部を加工します。(写真13)
  • リフレクターの円筒形に張り出している部分を、奥から30mmほど削り取ります。
  • ちょうどこの部分は、「高輝度白色LEDポジションランプ」を取り付けた際に、光が遮られてしまうところでもあります。
  • 削り取ることにより、白色LEDの光を活かすことができます。
  • なお、リフレクター表面は、非常に傷つきやすい素材で出来ているため、取り扱いは慎重に行います。

 

[写真14]



  • リフレクターを加工したついでに、全体をGT-R(BNR32)の純正塗装色である「ガングレーメタリック(KH2)」に塗装してみました。(写真14)
  • あわせて、ターンシグナルランプ(ウィンカー)のクリヤ化も行いました。
  • リフレクターを塗装する際は、必ず600番と1000番のサンドペーパーを掛けて、足付けをしておきます。
  • ただし、ウィンカーの入る部分だけはマスキングして、メッキを残しておきます。
    (芸が細かいでしょ?)
  • ウィンカーのクリヤ化は、レンズとリフレクターとの間に、オレンジ色のプラスチック板が入っているので、これを取り外します。
  • リフレクターのブラックアウトとウィンカーのクリア化により、フロントマスクがどのように変化するか、とても楽しみです。

 

[写真15]


  • HIDバーナーが取り付けられるリフレクターです。(写真15)
  • ユニット本体へは、3ヵ所で固定されます。
  • 上側の2つは、ボルトで固定され、左右および上下方向への光軸調整ができるようになっています。
  • 下側の1つは、オートレベリングの制御用モーターのシャフトに繋がります。
  • 今回は、3ヵ所に付いている固定用のコネクタを、そのまま流用します。
  • コネクタは、上下にある小さなツメで固定されているため、ツメを折らないように慎重に取り外します。

 

[写真16]


  • これが、ヘッドランプのオートレベリングを実現するための制御用モーターです。(写真16)
  • モーターが回転することによって、シャフトが上下に伸び縮みするようになっています。
  • 実際に、モーターを外した状態で実車に繋ぎ、どのような動作をするか実験してみました。
  • イグニッションをONすると、制御系の正常性をチェックするため、いったん最も縮んだ状態になり、すぐに通常の状態に戻ります。
  • その差は、約5~6mmほどでした。
  • フロントとリヤのシャフトの部分にハイトセンサーがあり、前後の傾きの違いから車の加重状態を割り出し、モーターを駆動してリフレクターの角度を調節し、適正な光軸となるよう制御しているのですね。

[ハウジングのメッキ加工]

 HIDバーナーからの放射光の有効活用とヘッドランプ本体の外見向上のため、ハウジングをメッキ加工することにしました。今回は、オリジナルパーツの開発・販売で有名な、ナイトペイジャーさんにお願いしました。

[写真17]



  • ハウジングをメッキ加工したものです。(写真17)
  • 新型CIMAでは、マルチプロジェクターヘッドランプの周りはリフレクターで覆われていますが、今回の移植では、ヘッドランプ本体をそのまま利用します。
  • ハウジングの元の状態では、金属の素地が剥き出しになっています。これでは、せっかくのHIDバーナーからの光が吸収され、熱に変わってしまいます。
  • そこで、ハウジングをメッキ加工することにより、リフレクターとしての機能も持たせることにしました。
  • 表面を鏡のようにピカピカにするためには、クロームメッキ処理をします。
  • これにより、HIDバーナーの放った光を有効に利用できるだけでなく、ヘッドランプ本体の外見を向上することができます。

 

[写真18]


  • ハウジングには、右用と左用とがあります。(写真18)
  • その違いは、ハウジングの側面にある四角い穴の位置です。
  • この四角い穴があることによって、前方に光を収束するだけではなく、側方にも満遍なく光を広がらせています。
  • 単にヘッドランプとしてだけではなく、コーナリングランプとしての機能も持ち合わせているのですね。

[バックプレートの作製]

 マルチプロジェクターヘッドランプを純正ユニットに取り付けるため、バックプレートとステーを作製します。今回も、原寸に合わせて図面を起こし、金属加工屋さんにレーザー加工をお願いしました。

[図面1]

(画面をクリックするとPDFファイルを表示します)
  • ヘッドランプ本体を固定するためのバックプレートです。(図面1)
  • 強度を考え、1.5mm厚のステンレス板(SUS304)としました。
  • 左右対称です。

 

[図面2]

(画面をクリックするとPDFファイルを表示します)
  • バックプレートを固定するための取付ステーAです。(図面2)
  • 右用と左用とがあります。

 

[図面3]

(画面をクリックするとPDFファイルを表示します)
  • バックプレートを固定するための取付ステーBと、固定リングA/Bです。(図面3)
  • 固定リングAは取付ステーAと取付ステーBに、固定リングBは取付ステーC1/C2に、それぞれ組み合わせて使用します。
  • 左右共通です。

 

[図面4]


(画面をクリックするとPDFファイルを表示します)
  • バックプレートを固定するための取付ステーC1/C2です。(図面4)
  • オートレベリングの制御用モーターへの取付位置を調整できるよう、長さを38~46mmの間で可変としています。
  • 取付ステーC1は右用と左用とがあり、取付ステーC2は左右共通です。

 



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